2017年11月10日金曜日

【感想】ポルノグラフィティ 11thアルバム「BUTTERFLY EFFECT」2017.11.10






<序文という名の言い訳>

ポルノグラフィティのニューアルバム「BUTTERFLY EFFECT」について、アルバム全体の感想を書いたのですが、結論からいうと書けませんでした。

リリースされてから2週間以上経過しているにも関わらず、アルバムの全容が未だに掴めない。

なので、いっそ書くのを止めようと思ってたのですが、アルバムリリース直後から考えて「確かに心が動いたこと」をなかったことにしてしまうのも勿体ないので、かなり散文になってしまったこの文章を記録として残しておこうと思う。

読みづらいは、やたらと長めの文章だは、という内容ですので、ご了承ください。
どちらかというと最後に紹介する曲ごとの歌詞解釈の記事のがオススメです。


ポルノグラフィティ

 11thアルバム「BUTTERFLY EFFECT」








ポルノグラフィティのニューアルバム「BUTTERFLY EFFECT」がリリースされた。

シングル5曲を含む全14曲ということで、かなりボリュームが詰まったアルバムとなっている。14曲全てに個性があり、王道のポルノグラフィティからかつてないほど実験的に振りきれた曲まで、似通った曲が全くと言っていいほどない。

幾度となく聴き直してきたが、僕の現時点での感想は「最高の曲が並んだ物足りないアルバム」である。
なぜそう感じたのか、それを書きたいと思う。

楽曲については、別記事に数曲分書いているのでそちらをどうぞ。




モンタージュ



アルバムのオープニングは"THE DAY"。

「RHINOCEROS」以降でこのアルバムが出るまでの最初の一歩が"THE DAY"であり、更には2016年の横浜スタジアムでの「THE WAY」の本編最後での新たな一歩の決意でもある。これほど相応しい始まりはないだろう。

曲目を見て面白いのが、間に挟まるシングル曲が、リリースされた時系列(もっといえば世に出た順)に沿っていることだ。最後は"キング&クイーン"で締められる。アルバムへ向けての飛翔というような位置付けでリリースされたが、アルバムでも最後に置くことで、ポルノグラフィティにとってその先の次の一歩を示しているように感じた。

"キング&クイーン"はかなりストレートな曲で、捻くれまくってる僕には眩しいのだけど、逆にここまで潔く突き抜けてくれると逆に快感になってしまうのだ。正直アルバムを聴いて一番感動したのは"キング&クイーン"であった。





一巡してまず感じたのは「不思議なアルバムだナ」と伊集院静風に言ってしまう1枚であった。極端にいってしまえば「何だこれ」という感覚。それくらい初聴きでは捉えきれなかった。

これまでもジャンルなどあってないような活動ではあったが、岡野昭仁が歌い、新藤晴一がギターを弾いてるという部分以外はほぼ全て違うことをしている。かなり実験的だ。

各楽曲でアレンジャーたちの個性が存分に発揮されている。
たとえば"君の愛読書がケルアックだった件"と"I Believe"ではどちらもウインドチャイムの音(キラキラとかシャラーンとした音のあれ)が使われてるけど、全く違って響いている。

様々なアレンジャーとの制作はアルバム「PANORAMA PORNO」の辺りからかなり色濃くなった。その時に語っていたのが「各アレンジャーがそれぞれポルノグラフィティのイメージを持っていて、それをしっかり魅せようとしてくれている」というもの。

それはヴォーカルだけでなく、ギターもしっかり主張させて合わせることでポルノグラフィティらしさになるというアプローチだ。

つまり言うなればアレンジャーによって解釈された"ポルノグラフィティらしさ"をメタに表現しているというイメージ。
特に"オー!リバル"から"LiAR"の流れはある種、ポルノグラフィティのアイデンティティを再認識したことにそれが表れている。


このアルバムでは、更に先の新しいポルノグラフィティを作り上げようという意識を持ってアレンジしている点も見受けられる。

これだけ幅広い楽曲たちを表現しきった岡野昭仁のヴォーカリストとしての進化は外すことはできない。

楽曲ごとの表情だけでなく、曲の中での歌声の変化の付け方など、今尚その進化の歩を止めない姿勢に感服である。しかし、それでいながらもどんな歌を聴いてもきちんとポルノグラフィティの岡野昭仁という個性を宿している。
このアルバム唯一といっていいほど全編通して貫かれているのはそれだけではないだろうか。

もちろん新藤晴一のギターも相変わらず振り幅が広いのだが、それよりもとにかく岡野昭仁を感じるアルバムとなっている。
岡野昭仁という縦軸が一本通っていて、そこに新藤晴一が横軸を広げているので、見るポイントによってかなり表情を変えるアルバムだ。

よく写真を沢山並べてそれで1枚の絵を完成させるというアートがあるけど、今回のアルバムにはまさにそれに近い印象を受けた。

近くで見るとバラバラなピースたちが、アルバム全体として見たとき、ポルノグラフィティとして見たとき、音楽業界から見たときと視点が離れていくほど、実はバラバラな曲たちに意味が生まれる。

過去と未来を見据えた今現在のポルノグラフィティを詰め込んでいる、云わばポルノグラフィティの「Montage」となっているのだ。









多様性



ただし、その多様さこそがこのアルバムへの評価の分かれ目にもなるところだろう。確かに、あまりに多彩すぎてアルバムとしてのまとまりは、ほぼないと言っていい。

狙いを外しているように聴こえる箇所もあるが、これから控えているアルバムツアーで聴けば印象は変わるだろうし、今後のライヴでも違う表情になっていくことだろう。


新藤晴一の言葉を借りれば、この音楽が飽和な時代に新しい音楽を作ること、そこに今作へ込められたメッセージがあるという。

「RHINOCEROS」発売時にアルバムへのコメントとして岡野昭仁は「一曲一曲を強いものにしたい」と、新藤晴一の言葉では「アルバムのロマンを信じたい」と言葉を残している。

それを体言するように、岡野昭仁は比較的シングル方向寄りの曲作りをし、対する新藤晴一はどちらかといえばアルバム向きの曲を追求しているように映った。

僕はアルバムにロマンがあると思っている人間なので、新藤晴一のコメントに対してとても共感した。同時にそのアルバムをより多くの人に届けるために、シングル曲をはじめ、1曲1曲に力がなければいけないという岡野昭仁の言葉にも共感を抱いている。

この2人のアプローチの違いがありながら「RHINOCEROS」にはアルバムのロマンというものを感じた1枚だった。




「RHINOCEROS」はその要素たちがぶつかり、奇跡的な化学反応を起こした1枚であった。「RHINOCEROS」も個性豊かな曲が並んでいるが、通して聴くとしっかりとアルバムとして捉えることができる。
おそらくそれはアルバムの中で押し引きがしっかりしていて、バランスを取っていたからだろう。

その点で「BUTTERFLY EFFECT」ではひたすら押しの曲が多く、アルバムへのロマンが決定的に欠如したものと聴こえてしまうのだ。もちろんそういう意図のアルバムはたくさんあるが、「RHINOCEROS」の後ということで、そこにどこか物足りなさを抱いたのも事実である。

確かにシングル曲はどれも力強い。そしてアルバム曲も素晴らしいものばかりだ。しかし、アルバムにまだロマンを抱いている部分の僕が待ったをかける。今のところそんな印象である。

まるで和洋折衷のブッフェに行ったようなアルバムだ。

1つひとつの楽曲(お品書き)はとても完成度が高く、どこを切り取っても文句のない内容。しかしあまりに充実しすぎて食べ終わって「何が美味しかったんだっけ?」「最初に食べたアレ何だったけ?」となる感覚。

最初に書いた「最高の曲が並んだ物足りないアルバム」というのは、完成度の高い素晴らしい楽曲が並んだ中からアルバムへのロマンが抜け落ちた1枚というところによる。

よりにもよって、今年はアルバムへのロマンをビンビンに感じるものをよく聴いていたので、そこのギャップをまだ咀嚼しきれないのだ。


あらためてアルバムタイトルを見れば、収録曲たちは一滴の雨だ。だからこそ、降る時期も場所も違っている。面ではなく点で捉えることがこのアルバムとの正しい向き合い方なのは理解している。

《雨にもちゃんとした素敵な理由がある》

という"天気職人"の歌詞のとおり、それぞれの曲にストーリーがあり、聴く人間の心に落ちて波紋を広げる。

時には地球の裏側のように嵐となって。


"君の愛読書がケルアックだった件"の歌詞が実はとんでもなくヤッバイ内容な件
MICROWAVE歌詞解釈〜Believe when I say "I want it that way"
夜間飛行 歌詞解釈〜「偶然は愛のようにひとを束縛する」
"Working men blues"の替え歌の件についてちょっと本気出して考えてみた










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