2017年1月30日月曜日

【感想】ぼくのりりっくのぼうよみ「Noah's Ark」





スポーツ界でいつも凄いなと感心してしまうことがある。


オリンピックなどで凄いスター選手が現れるとその選手が引退する時に「次のオリンピック大丈夫なのかな?」と思う。しかしその次のオリンピックの時にはいつの間にか新たな才能あふれる選手が現れて颯爽と活躍している。

よくもまぁこうやって途切れずに受け継がれていくものだと感心してしまう。


音楽界も同じである。


定期的にしっかりと時代を牽引していく新たな才能が現れる。

ぼくのりりっくのぼうよみには間違いなくその才がある。


発表されたアルバム「Noah's Ark」を聴きながらそんなことを考えた。


ぼくのりりっくのぼうよみ「Noah's Ark」














2017年最初の傑作



17歳でメジャーデビュー。

デビュー時からもうすでに多くの注目を浴びていた。


ビクターの猛プッシュもあったが、それはしっかり実力を伴ったものであるので、たまにあるレーベルの空回りみたいな猛プッシュのそれとは違っている。

リスナーにもその才能はしっかり届いて伝わっている。


そんなぼくのりりっくのぼうよみ、ぼくりりくんが新たに放ったのがこの2ndアルバム「Noah's Ark」である。


個人的にはやられた!という程素晴らしい傑作だと思う。

何をどうやられたのだろうか。自分でも分からない。


「Noah's Ark=ノアの方舟」と題されたタイトル。それは先行発売されたEP「ディストピア」から地続きの世界観である。


収録曲である"Newspeak" をあまりにも気に入りすぎて、気になる存在から一気に好きなアーティストになっていた。






18歳にしてオーウェルを歌詞に持ってくるセンスである。
そんなことするのマシュー・ベラミーくらいだと思ってた。


怖い。


さっきから才能と書いてばかりで短絡的かもしれないけど、そう言うほかないのだ。それくらい音楽性、人選のセンスがいちいち良いのだ。
この感覚に一番近いのは宇多田ヒカルではないかとさえ感じた。少し言い過ぎか。


そこから先行配信された"after that"がこれまた一周回って怒りたくなるくらい良い楽曲で、アルバムが楽しみだった。







結果的に先にも書いたように少なくとも僕は大好きである。これからひたすらべた褒めしていく。
1月にして間違いなく今年を象徴する1枚となるだろ。



自分を縛る鎖は



内容を見ていく。

まず"Be Noble"の出だしから心を掴まれる。サビ始まりの強さである。何者かになりたくて結局何者にもなれない、しかしそれでも進むという内容である。






「3月のライオン」の主題歌にも決まったらしいね。

アルバム通して自分自身の在り方について歌われている。


朝目が覚めたら 僕を縛る鎖 全部
無くなっていないかって思うよ
~"Be Noble"

この己を縛る枷の中
永久に明けない夜の果ては未だ
~"在り処"


当てもない迷路に迷いこんだ
真っ白に染まった心まで
~"shadow"


決められた線路をゴロゴロ進んでく
与えられた役柄をこなすだけの毎日
~"予告編"


と序盤4曲でこれだけ「定められた自分のアイデンティティ」について歌われている。


インタビューを見るとこのアルバムが「情報の洪水」と「救い」を歌っているとある。
上に挙げた歌詞はどれも社会と自分の関係性と取れる。


「ディストピア」収録の既存曲を挟み流された人間たちの顛末が歌われる。


救いとしてのモチーフこそがアルバムタイトルの「Noah's Ark(ノアの方舟)」である。
タイトル曲で歌われる「救い」


朝を見る 意志を持った人々にのみ
鳴り響く救いは始まり
~"Noah's Ark"



ここで歌われる意志こそアイデンティティなのではないかと思う。


そう感じた時に、序盤で歌われていた、自分を縛る鎖や枷は、しがらみも含みながら情報化社会という洪水に流されず自分を守ってくれる命綱の役割でもあったのではないかと感じたのだ。


しがらみとしての鎖は流され、本当に大切な自分の存在こそが最後に残って自分を繋ぎ止めていてくれる。


「意志」については本人がブログで「自分で規定した自己の文脈によって決定された方角に沿って進んでいる状態の人間に宿るもの」と定義している。


18歳がそんなこと歌う世の中でいいのだろうか。

歌詞の側面ばかり触れてしまったが、楽器隊の演奏も素晴らしくて、聴き応えのあるサウンドが並んでいる。生楽器の使い方が個人的にはとても好きである。



おしまいに




僕は先日YUIが好きだったという話を長々と書いた際に、同世代ミュージシャンを聴くことの意義を自分なりに書いている。


女性シンガーソングライターはYUIで始まってYUIで終わる、僕の中で


ぼくりりくんは間違いなく今の18歳を代表する存在の1つになる。だからこそ同世代は好き嫌いに関わらず一度触れてみてはいかがだろうか。


そして何より恐ろしいのが、ぼくりりくんの音楽性が若者に限らずの世代にもちゃんと伝わるようなクオリティも持っているということである。


いつものようにだらだらと書いてきたが、絶対合わないという人もいると思う。
でもせっかくなら聴いてみてから判断して欲しい。

ただ、ラップで韻を踏んでないと云われても、そもそもそれは昔から云われてるので今更云われても。

それよりも、この年齢で自分をしっかりプロデュースして言葉で闘うぼくりりくんを僕は老婆心ながら応援したいと思うのだ。









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