2016年12月17日土曜日

酒とポカリの相性 居酒屋にポカリスエットが置いてない理由






※この記事は転記記事に加筆修正を加えたものです。


年の瀬になり、忘年会シーズンである。

前に友人と宅飲みすべく、スーパーに買い出しに行ったのだけど、その時にこんなポップが出ていた。


「お酒を飲むときこそ、ポカリスエット」


見てビックリした。

だって、ポカリスエット飲むと酔いが回るからダメだって聞いたことない?

ということでお酒と脱水の仕組みについて調べてた。








飲酒後にポカリは、あり



実は飲酒後のポカリスエットについては大塚製薬が公式で推奨としているのだ。

http://pocarisweat.jp/scene/liquor/






アルコールは利尿作用を高めるので、体内の水分が不足しがちになる。
それをポカリスエットで補うと。

また、よく言われている「ポカリスエットは吸収が早いので、アルコールの吸収も早めてしまう」というのは実証されていないそうだ。

なので、ビール飲みの僕のような人間はポカリスエットも必須である。

では、なぜポカリスエットがいいのかということになる。
それにはアルコールによる利尿作用と脱水の仕組みを知ることで分かるようになった。



アルコールによる脱水症状




人の身体には利尿をコントロールしている「坑利尿ホルモン」というものがある。
アルコールにはその坑利尿ホルモンの働きを抑制してしまう作用があるのだ。


それにより利尿に対する抵抗が落ちてトイレが近くなる。
関係ないのだけど、居酒屋のトイレってタイミング外すとめちゃくちゃ待つ。一緒に待ってる人と話したりして謎の友情が芽生えるレベル。皆様におかれましては早めのトイレを。


もう1つアルコール飲料に含まれる「カリウム」が新陳代謝を高めていることもその要因である。
カリウムはビールに多く含まれています。ビールでトイレが近くなるというのはこういう訳がある。

まぁ、あとは単純にビール飲み過ぎということもある。



さて、ここからが脱水のメカニズムとなるが、飲んだお酒は体内で分解されないといけません。

調べてみるとビール500mℓ飲んだ時に約3時間かかると言われている。

しかし、ビールにはアルコールとカリウムの作用があり、分解と吸収される間に利尿作用が発生する。

そうなると身体にある水分、つまり血中にある水分を排出することで補っている。


言うなれば身体から水分という貯金を切り崩しているようなもの。
次の給料日まで貯金を取り崩している生活と同じ。

体内に余裕があれば家計を賄えるけど、貯金が少ないと支払いが勝ってしまうことに。この状態こそが脱水症状となる。

ここまで書いて、たとえ話の方が分かりづらい気がしてきた。


要するにビールの水分を吸収されるまでの間に、それ以上の水分が身体から出てしまうのです。

なので、吸収の早いポカリスエットが推奨されるわけですね。


居酒屋にポカリがないわけ




それくらい役に立つポカリスエットなのですが、なぜ飲み屋で取り扱いがないのだろうか?

ヘタなソフトドリンクよりもむしろウコンと並べて推奨しても良さそうなものですが。

それは、おそらくですが。


「ポカリはアルコールの吸収を早める」


という迷信が一人歩きして浸透してしまっているからではないか。
僕もこれだけ調べるまではポカリ良くないと思ってたからね。

もはや風評被害である。

大塚製薬はこの都市伝説が嘘ってことをもっと広告とかで広めてけば、居酒屋で取り扱ってもらえるビジネスチャンスだと思うんだけどな。


大塚製薬さんそこんとこどうなんスカ?


ついでと言いうかこれが本題なんですが、その広告にポルノグラフィティを使ってくれないですかね。

ほら、彼らビールの歌出してるくらいだし、以前楽曲を2回も使っていただいてるし。


そしてこの提案をした僕に金一封を。

これを読んだ良い子のみんなはポカリスエット飲もうね!


【関連記事】
【レポ】POCARI SWEAT LIVE ”;RE・BODY”レポ(再掲)








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2016年12月15日木曜日

【年間ベスト】2016年個人的ベストライヴ トップ5





師走である。

昔やってたブログで「年間ベスト」企画をしていた。

ベストアルバム(50枚)、ベストソング、ベストライヴ、ベストムービーを自分なりに選んでた。頑張ってたな。

中でも年末といえば年間ベストアルバムであった。


あの頃は洋楽雑誌もまだ盛んでロッキングオン、クロスビート、snoozer辺りなんかよく見ていた。ロキノンは鼻で笑い飛ばしてたが。まだ発売してないコールドプレイのアルバムが年間一位ってなんだよ。


当時は個人ブログでもやってる人多かったしね。

とまぁ、やってたんだけど、年々洋楽の購入枚数が減っているので、まぁいいかと。映画も本数観てないし。

でも、せっかくブログやってるし、何かしらはやろうということで、ベストライヴトップ5やります。









5位 星野源/星野源2016年全国ツアー『YELLOW VOYAGE』







今年初めてのライヴでもあったこのツアー。幸運にも友人共々当選してさいたまスーパーアリーナ公演2日間に参戦した。

自身最大のヒットとなったアルバム「YELLOW DANCER」を引き連れたツアー。

アルバム曲を中心に聴かせるライヴから魅せるライヴへの変容が感じられるツアーであった。

星野源がこんなに動きまわることがあっただろうか。
星野源がこんなに客を煽ったことがあるだろうか。

それでも、恒例の弾き語りコーナーがあったり、昔の曲もしっかり聴かせてくれて、大満足のライヴだった。
どうでもいいが、このブログ最初のライヴレポを書いたライヴでもある。


【ライヴレポ】
【レポ】星野源全国ツアー「YELLOW VOYAGE」さいたまスーパーアリーナ part.1
【レポ】星野源全国ツアー「YELLOW VOYAGE」さいたまスーパーアリーナ part.2
【レポ】星野源全国ツアー「YELLOW VOYAGE」さいたまスーパーアリーナ part.3



4位 THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016 -YOKOHAMA SPECIAL day.1







遂に復活したイエモン。
彼女さんのおかげですっかりハマった。CD全部借りて、チケットも取ってくれたので代々木二日目、さいたま2二日目、そしてこの横浜アリーナ初日に参戦できた。

復活ツアーとはセットリストを大幅に変えてきて"RAINBOW MAN"から始まる「SICKS」を中心としたセットリストだった。
復活後初めて披露された"天国旅行"は圧巻であった。

もちろん通常の復活ツアーも最高だったけど、あのスペシャルライヴならではの何が起こるか分からない特別感を味わえたので、このライヴにした。


【ライヴレポ】
書いてなかった 今気付いた

【レポ】THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR @国立代々木競技場第一体育館 DAY.2 part.1
【レポ】THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR @国立代々木競技場第一体育館 DAY.2 part.2
【レポ】THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR @国立代々木競技場第一体育館 DAY.2 part.3


3位 Radiohead / SUMMER SONIC '16 TOKYO







圧倒的であった。

夏の2日間全てこの人達に呑み込まれてしまった。

新作中心ながらも"Airbag"や'No Surprises"などが挟まれて披露され、アンコールではまさかの"Let Down"。

これだけでも感涙ものであったけど、トドメに演奏された"Creep"。あれほどまでにスタジアム全ての人間が1つになる瞬間を見たことがあるだろうか。
しかし、その中には1人ひとり、様々な想いが詰まっていたのだ。


【ライヴレポ】
【レポ】SUMMER SONIC 2016~Radiohead編


2位 ポルノグラフィティ/ 横浜ロマンスポルノ'16~THE WAY~






4度目となった横浜スタジアムライヴ。初日は雨バンドらしく雨。

ポルノのライヴはいつでも楽しい。それは徹底的なまで研ぎ澄まされたエンターテイメントだからだ。

これだけのキャリアを重ねても挑戦を止めない2人。アコースティックという意外な始まり、意表を突いたアレンジ、シングルも多かったライヴだけど、最も凄いと思ったのは、最近の曲も全く昔の曲に劣っていないことだ。

"THE DAY"の力強さは凄まじいものがあった。

ライヴという空間は、なんでこんなに幸せなのだろう。


【ライヴレポ】
【レポ】横浜ロマンスポルノ'16〜THE WAY〜 part.1
【レポ】横浜ロマンスポルノ'16〜THE WAY〜 part.2
【レポ】横浜ロマンスポルノ'16〜THE WAY〜 part.3
【レポ】横浜ロマンスポルノ'16〜THE WAY〜 part.4
横浜ロマンスポルノ'16〜THE WAY〜セットリスト・使用ギターまとめ



1位 ハルカトミユキ/LIVE TOUR 2016 'LIFE' FINAL − 約束の地・野音!










僕はどこまでもポルノグラフィティが好きである。ライヴが見れればほぼ無条件で1位にしたいと思うほどだ。

そんな僕ですら、今年はこのライヴを1位にしたい。

今年リリースされたハルカトミユキのアルバム「LOVELESS/ARTLESS」は大傑作であった。

47都道府県全てを回ったハルカトミユキの2人、その最後の地点となった野音。

ライヴレポでも書いた通り、昨年の野音は完成度もしては少し気持ちが空回りしてしまった部分があったと思う。それでも想いはしっかり届いたが。

しかし、今回のハルカトミユキの野音、内容は完璧であった。

ハルカトミユキを好きで良かった。もっと言えば音楽を好きでいて、信じていて良かった。

音楽は世界を救うことはできない。でも誰かの心は変えることができるし、時にはその人を救うことができる。

そんな音楽が鳴った瞬間に立ち会えていることが何より嬉しかったのだ。

同時に、そんな素晴らしきライヴが決して動員的には成功しなかったことが何より悲しい。
あと惜しむらくはあの韓国との交流イベントとの音かぶりである。絶対友好にはならない。


【ライヴレポ】
【レポ】ハルカトミユキTOUR "LIFE"FINAL 約束の地・野音 part.1
【レポ】ハルカトミユキTOUR "LIFE"FINAL 約束の地・野音 part.2
【レポ】ハルカトミユキTOUR "LIFE"FINAL 約束の地・野音 part.3


ということで、トップ5を選んでみました。

今年のあなたのベストライヴはなんでしたか?








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今年の重大ニュース「タックスヘイブン」「パナマ文書」の話題どこいった?






先日、流行語が発表され、今年の漢字一文字も発表された。ということでそろそろ2016年を振り返る時期にきた。

まず、社会的な出来事から。

今年は芸能界も沢山のニュースがあり、オリンピックもあったので話題にはことかかない1年だったのではないか。でもまた「金」はねぇよ。

さて、そんな2016年。4月に世界に衝撃が走ったニュースがあったのを覚えているだろうか。

それが「パナマ文書の流出」事件である。








パナマ文書とは



当時でこそ話題になったけど、しばらくして少なくとも日本ではほぼ報道がなくなったので、覚えてない人も多いと思う。

ということで、簡単に振り返ってみる。

パナマ文書流出事件とは、パナマにある「モサック・フォンセカ」という法律事務所から機密文書が流出してしまったことに起因する。

その機密文書には、簡単に書くと大企業や富裕層が「タックス・ヘイブン(税金回避地)」を利用して税金対策や巨額の融資を受けていたという文書である。
経緯はWikipediaから引用する。


合計2.6テラバイト (TB) に及ぶ内容は、匿名で2015年にドイツの新聞社『南ドイツ新聞』に漏らされ、その後、ワシントンD.C.にある国際調査報道ジャーナリスト連合 (ICIJ) にも送られた[6][7]。世界80か国・107社の報道機関に所属する約400名のジャーナリストが、この文書の分析に加わった。2016年4月3日、この文書についての報道は、149件の文書と伴に発表された[8][1]。関連企業・個人リストの一部追加で20万社超の法人情報は、同年5月10日、日本標準時では同日午前3時にウェブサイトで公開され、オフショアリークスの検索システム(ICIJ Offshore Leaks Database)に統合され、完成版は随時発表される予定である

文書は1970年代から作成されたもので、総数は1150万件に上る。文書には株主や取締役などの情報を含む、オフショア金融センターを利用する21.4万社の企業の詳細な情報が書かれている。これらの企業の関係者には多くの有名な政治家や富裕層の人々がおり、公的組織も存在する。合計2.6テラバイトに及ぶ文書は匿名者によって、2015年にドイツの新聞社『南ドイツ新聞』に漏らされ、その後、ワシントンD.C.にある調査ジャーナリスト国際連合にも送られた。80か国の107社の報道機関に所属する約400名のジャーナリストは文書の分析に加わった。2016年4月3日、この文書についての報道は149件の文書とともに発表された。関連企業・個人リストの完全版は同年5月初めに公開される予定である。



富裕層や多国籍企業の税逃れ対策強化 「パナマ文書」で税制不信が浮き彫り



違法でなければ善しとするか



さて、ぱったりと報道が途絶えてしまったことについて、何より大きいのがこの仕組みで税金を免れる行為は脱税ではないからである。
つまり、違法性がないのだ。

なのでいくら大企業などが並んでいても問題とはできないのだ。
だが、この税金が納められていれば、消費税の増税が必要であったのか、そういった話になる。

しかし、そうやって簡単に批判することができるのだろうか。

人道的に批判をしても、あくまでも法律的には合法なのである。
もちろん、脱税やマネーロンダリングはダメ。

現状で言えば法人税率は下がったが、消費税の税率や厚生年金保険料なども上がっている。つまりは会社は潤うが、個人の税金負担は増えている。
そこで、大企業であればベアなどで対応するが、世の中の多くの中小企業は対応できていない状態にある。

税金のことで言えば知らない人間、もっと言えば正直者がバカを見るのだ。

こうしたことで一般人がどうこう言うのであれば、自分も知識を得ていくことだ。
世の中はここまでの出来事が起きても変わらず回っているのだ。それならば自分が変わるしかない。

そんなことを考えて落ち込んでしまう。








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2016年12月14日水曜日

【表現】晴一さんの目になって世界を見てみたいと思ってしまう






エッセイが好きである。

面白いエッセイを書く人というのは、やはり日常を見る目線が、どこか人と違うもの。それを鮮やかに切り取る。

たとえば僕がその辺散歩して記事書いても面白くないが、穂村弘さんがエッセイにしたらとても面白くなるみたいな。

難しい言葉を使わなくても、切り取り方や目線が面白いからこそ、真似のできない表現となるのだと思う。

面白い歌詞を書く人との間に呼応するものを感じて、それを書いてみようと思う。








ストレートのある歌詞、じゃない歌詞



ここ何年も歌詞の世界で言われ続けてる言葉がある。


「表現が直球すぎて、含みが全くない」


よく言えば素直で誰にでも分かりやすい歌詞ということだ。

「君がこんなに好きだから、とても会いたい」

別に西野カナではない。そういえば「会いたくて 会いたくて 震える」ってあらためて見ると凄いフレーズだ。

「落ち込まないで、ほら君は1人じゃない。同じ空を見上げよう」

以前TSUTAYAでひたすらファンキーモンキーベイビーズのベストが流れてて、ほぼ全部こんな歌だった。マジで。

というように、とてもストレート。


ではちょっと日常の風景をちょっと違った目線で作られた歌詞はどんなものがあるだろう。


冷たい骨を晒した解体途中のビルの上を舞うムクドリ
その巨体は少しずつ時に体を啄まれ ようやく眠るのか
ポルノグラフィティ/素敵すぎてしまった


ガラスの向こうには 水玉の雲が
散らかっていた あの日まで
スピッツ/楓


日常でよく見るし、言われればパッと頭に思い浮かぶような情景なのに、とても詞的な表現だと思う。


表現



ストレートとストレートじゃない例を上げてた。優越をつけたいわけじゃない。ストレートの歌詞の方がいいという人も当然いる。しかしそればかりになってしまっては、歌詞が好きな人間には悲しい。

エッセイの話に戻るけど、日常の切り取り方で、表現は無限にある。


世界は誰にでも門を開いて待っている
平等の名の元に請求書と一緒に

Mr.Children/もっと


ひとつも難しい言葉を使ってない、けどこの表現は素晴らしいなと思う。前半と後半との落差がちょっと短歌的だなとも思ったりした。

こういうちょっとした視点の変化で表現は生まれると思う。
晴一さんとかミスチルの桜井さんなんか詞的表現なんかが、自分はとても好み。

草野マサムネは目線とかそういう次元でもなく凄すぎる。

表現とは、辞書で見てみよう


表現
[名]心理的、感情的、精神的などの内面的なものを、外面的、感性的形象として客観化すること。また、その客観的形象としての、表情・身振り・言語・記号・造形物など。「情感を表現する」「全身で表現する」


あるコラムで心に残っていることがある。どのサイトか失念してしまって引用元が思い出せないのが恐縮だが、少し引用すると「歌詞表現とはその人らしさを表に出すものだ。だから見た時にその人と分かるような歌詞は素晴らしい」というような内容であった。

ストレートな歌詞はいきすぎると、個性も何もないものになってしまう。
そんな中で同じ「好き」という表現を自分なりに表すために、アーティストたちは様々な言葉を出そうと日夜頭を捻らせている。

僕はやっぱりそういう歌詞が好きだったし、そういう歌詞がどんどん増えるといいなと願う。

でも疲れるとストレートな歌詞聴きたくなるよね。








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2016年12月12日月曜日

【ショートストーリー】Part time love affair






人混みの中を泳ぐように車を走らせる。


夜を迎えた街にはイルミネーションが灯り、年の瀬の街を彩っている。磨きあげられた車のボディには、その光たちが反射し輝いていた。
だが、車の中から見える景色はどこか幼稚な幻にも見える。

助手席に座る女はどこか虚ろな目をして車窓を眺めている。
少し前にあの男に抱かれていたはずの身体をドアに寄りかからせながら。

あの男と彼女の関係を作ったのは、他でもない、この私なのだ。
時間、場所、行為、いくつかのルールを決めてあの男と彼女を会わせていたのだ。

彼女に対しての想いを知っているからこそ、叶わぬ夢を少しでも見せてやったのだ。
今夜、あの男は…



目的地に到着して、車を停めサイドブレーキをかける。
ノブに手を掛けようとした彼女を強引に引き寄せる。身を翻した拍子に女の背中がクラクションを鳴らした。

また口が嘘を零す前に、塞いだ唇。
女の嘘が残ったような舌先のざらたき、僕はそれに舌を絡ませた。

首筋に付いた傷が目に入った。
まるでタトゥーのような模様になったそれは、なるほどあの若造が私宛につけたものか。


エンジンを止め、君を車から連れ去り、エレベーターへ乗り込む。
女は右上に光るランプと、徐々に上がっていく階数の数字を交互に見ていた。

自宅に入ると、天窓から月光が射し込んでいた。

並べたグラスに、ワインを注ぐ。
一口飲むと女はこのグラスのように繊細な声をそっと零した。

あの男とのことを聞いてみるが、女は顔をそらして目を伏せてしまった。まぁいいだろう。



ボトルが空いた頃、彼女の肩に手をかけた。
少しだけビクッと反応を示したが、すぐにその身を寄せてくる。そして、また夜の海へ漕ぎ出した。

何度身体を交わしたか分からない。なぜ身体と心を競わせるのだろう。
まるでずっと寄り添ってきた悲しみを抱いているかのようだ。



横で眠る女を横目にベッドを抜け出した。
メモ帳を1枚破き、愛用の万年筆で書き置きを残した。

昼間とはまるで違う表情を見せる窓の景色。夜はただ果てしない闇が広がっている。

今朝は清々しいほど晴れて海がよく見える。この景色を求めて、彼はこの街を選んだのだ。

磨きあげた車に朝陽が写る。
あの別所という男はどうなったのだろうか。そう思いを巡らせながら、ゆっくりと下りカーブを曲がる。



話は少し前に戻る。

彼女はひとり天窓を見ていた。

夜中に目が覚めた時に見えた天窓の外の星。あんなに綺麗に輝いていても、私のところには届かない。
いっそ、水槽に水を張って水面に星や月を写せば手が届くのだろうか。いや、まさかそんなことはない、と小さくかぶりを降った。


朝になり目を覚ますと、あの人はもういなかった。

あの人のものであった、身体が少し震えていた。
ただ都合のいい女、それが私なのだろうか。



私はあの男を思い出す。私はルールを破った。
あの時、彼が出ていくのを引き留めようとしてしまった。理由は自分でも分からない。けれど彼を止めなければ二度と戻ってこない、そんな気がしたのだ。しかし彼は出ていってしまった。いつもと違う険しい顔で。


私の感情は飴のように溶けてしまった。しかし、こうして朝になるたびに、また形となって現れる。


彼はきっとここへは帰って来ないだろう。
この、横浜の街に。

リリー、と呼ばれた女はタバコにそっと火を点けた。

このタバコが真っ白な灰になったら、ここを出よう。私のことを誰もリリーと呼ばない街へ、そう誓って。



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2016年12月11日日曜日

【映画】「この世界の片隅に」あらすじ&ネタバレ感想






映画「この世界の片隅に」を観てきた。

2016年の終盤に、とんでもない作品がきたものだ。

方々でも云われている通り「2016年のベストムービー、オールタイムベストに入るレベルの作品」である。

いや、日本映画史上に残るべき作品だと思う。

そんな映画がこれくらいの公開館数というのは、ちょっと残念でならない。

見終わったあと、こんなに心に色々なものを遺していく作品は、本当に久しぶりだ。
自分の中では「トイ・ストーリー3」以来かもしれない。

そんな胸に込み上げてきたものを簡単に言葉にできるほど、単純な話では決してない。でも、この作品が1人でも多くの人に届けばいいと思い、クラウド・ファンディングにも参加してない僕は筆を取ることにしよう。

この手の映画は場面場面を思い出す度に涙腺がやられオーオーと泣いてしまうので、感想はなかなか進まないものである。


あらすじ




1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。


監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社)
音楽:コトリンゴ
アニメーション制作:MAPPA

声の出演:
のん
細谷佳正
稲葉菜月
尾身美詞
小野大輔
潘めぐみ
岩井七世
澁谷天外
配給:東京テアトル







感想(ネタバレ含む)




ここから先はネタバレを含む。

と書いたが、この映画で起こる1945年8月6日に広島で起きる悲劇は、観る人のほぼ全員が知っていることである。

だからこそ、主人公すずが歩んでいく人生、出てくる日付が同時にカウントダウンでもある。

この作品は戦争の時代を描いたものではあるけど、戦争の悲惨さや反戦メッセージを訴えかけているだけの映画ではない。

この映画は"その瞬間にその土地で生きている人々"が描かれているのだ。だからこそ、空襲の中でも、防空壕の中でも時折クスッと笑ってしまうようなシーンが随所に挟まれる。

だからこそ「みんなで笑って暮らせたらええ」という台詞が上っ面の綺麗事に聞こえないのだ。
ちなみに、そうした笑いが入るのは原作が週刊連載だったためである。そのオチの要素がそのまま映画でも受け継がれている。

1人の少女の目を通した戦争下の日本の当たり前の日常とすずの成長を描いた作品だ。

その上で、映画に感情移入するとこは、主人公すずがいかに魅力的で感情移入してしまうようなキャラクターかにかかってると思う。

それを踏まえて映画を観ると、最初の海苔を届けるために、舟に乗っているすずの一連のシーンだけで、観る人全員がこのすずという女の子の可愛らしさに魅了され、この子を応援したくなることだろう。

普段はおっとりして、ちょっと天然なすずだからこそ、終戦の日に怒りを露にし、畑で泣くすずの姿に胸を打たれるのだ。





キャラクターとしては原作漫画でもしっかり描かれているけど、映画化において、それをさらに推進させているのが、主人公すずの声を演じたのんの力によるものだ。



のんの声優



僕はアニメ作品には疎いので声の演技というものは、比較できないけれど、この作品におけるのん(能年玲奈)の演技は最高である。

この作品はすずの声がのんでなかったら、決してこれほどのアニメ作品とならなかったと断言できる。健気さの中に儚さがある声で、時代ごとや出来事によるすずの声の変化も素晴らしいものだった。

何より声の温度が良いと思って、すずというキャラクターに文字通り"命を吹き込んだ"のだ。

広島出身じゃないのに広島弁上手い。個人的にだけど、ポルノファンだけあって、広島弁の日常会話はわりと分かったので嬉しい。

ある女の子の目を通して時代に移り変わりを描いていくというのは、まさに朝ドラではないか。というところものんの配役がさらにぴたりと当てはまっているように思えてしまうのだ。


原作との相違点



僕もご多分に漏れず、映画を観たその足で原作を購入した。

上中下巻を読んだけど、そこで思ったのは、原作の映像化という面でも、ほぼこれ以上ないと言っていいほど原作への愛を感じる映画である。

原作だけにあるシーンもあって、それもまた素晴らしい。
特に中巻の最後の白木リンの

「人が死んだら記憶も消えて無うなる」
「秘密はなかったことになる」
「それはゼイタクな事かも知れんよ。」

この言葉を原作では終盤ですずが回想していたりする。

さらに、ここで出てくる茶碗の話がすずの最後の「笑顔の器になる」(原作では「記憶の器」)という言葉に繋がってるんだろうと思う。

夫である周作もリンの関係も描かれており、リンというキャラクターがさらに深くなる。




また、すずと周作の間に子どもができないことへの2人の関係も描かれている。

細かな時代背景などもあるので、じっくり原作読んでから映画を観るとまた新しい発見があるだろう。



その他細かな覚書



ここからはいくつか箇条書きで。


・選ばなかった道

すずと周作が橋の上で語り合うシーン。周作は選ばなかった道は覚めてしまった夢のようなものであると

そこでは哲にまつわる話を示すように思うが、この言葉はさらに先で時限爆弾により晴美を失ったのシーンにまで繋がっていくのは気付いた時にまた泣いた。
晴美がもしも左側にいたら、あそこに逃げていればなど「たられば」を巡らせるすずだけど、それは周作が語っていた選ばなかった道なのだ。

この「たられば」を抱えながらすずは生きていく。

この「選択」の話は以前歌詞の解釈の時にも書いたが「選ばなかった道がどうなるか知る由はない。だからこそ、選んだ道をしっかり進みその道を正解にするしかない」という言葉を思い出した。


・姉・径子を巡る話

すずの義理の姉にあたる径子のストーリーが特に心を抉られる。




夫の死後実家に娘の晴美を連れて戻るが、晴美を時限爆弾で失ってしまう。

連れていたすずに辛くあたるシーンから胸が痛くなる。ある程度、その後すずを許して仲を再び呼び戻すシーンは来るなとは思っていた。予想はしてたけど、もちろん泣いた。

しかし、その後でひっそりと娘の名を呼びながら泣いている径子が映ると、感情抑えられるわけがないだろう。


・キャラクター

上ですずの魅力について書いたけど、この作品は他のキャラクターが誰も彼もが魅力的である。

おそらく原作が週刊連載でじっくりと各キャラクターを書き分けられていることが大きいのだと思う。

それにしてもすずをはじめ「ありゃー顔」がみんな可愛い。





・食事描写

書き上げるとキリがないくらい、食事の移り変わりや食事の描写が秀逸である。

この映画は空襲シーンこそあれど、その時にどんな戦況だったとかそういうのはあまり描かれない。それはあくまでも庶民であるすずの目線を通したからだ。

そのすずを通したこの時代を最も反映していたものが、食事である。





配給が減ってきたことや終戦後の白米、とにかく食べてるものを追っているだけでもそれがどういう状況下であったのかが分かるようにできている。


・音楽

これもあちこちで言われてるがコトリンゴさんの音楽が素晴らしすぎる。今ならサントラ聴いただけで涙出るレベル。

細かな演出だけど、すずが料理してて包丁とまな板でバイオリンのように構えて鍋に切ったはこべを入れていくシーンでバイオリンが流れたり、こういう細かな演出も上手いなぁと思った。





・客層

話には聞いていたが、とても年齢層が高かった。本当にリアルタイムで経験したような人たちもいたくらいだった。

横にいたおばあちゃんが時折身体を前のめりにして見入っていたのが印象的だった。


・最後の最後の演出

この映画は絶対エンドロールの最後の最後まで観るべき作品である。

クラウド・ファンディングの賛同者の名前が流れたあと、最後に流れる"ある手の演出"で、僕はまた泣いてしまった。



もうね。この映画、良いところかありすぎてどこから褒めればいいのか分からなくなる。

とにかく、こんな素晴らしい作品が今劇場で見られるんだから、とにかく1人でも多くの人に観て欲しい。


町山さんと宇多丸さんの解説がとてもタメになるので、観た後に是非聴いてください。
























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