2016年6月17日金曜日

AGAIN歌詞解釈~「遥かな昔海に沈んだ架空の街の地図」とは




ポルノグラフィティの歌詞は素晴らしい。

特に新藤晴一の言語感覚は、何度もハッとさせられ、聴くたびに好きだなぁと思う。岡野昭仁の歌詞はまた対称的で、それがポルノグラフィティの魅力となっている。

今回はポルノグラフィティの10thアルバム「RHINOCEROS」に収録されている"AGAIN"の歌詞について自分なりの解釈を書いてみたい。




ねこまつさんの歌詞解釈




"AGAIN"について、ファンのねこまつさんがブログで考察をしている。

感心させられっぱなしで読ませていただいたので、この歌詞のテーマとかそういうことについてはねこまつさんの素晴らしい記事を読んでください。

僕も"AGAIN"の歌詞については、新藤晴一のパーソナルな部分がかなり強く出ていると感じていた。なのでねこまつさんの考察がまさにそれを体言してくれていたので、非常に感銘を受けた。

ここから先はねこまつさんの記事を読んでる前提で以下の記事を書いているので、ご了承ください。


個人的に気になったフレーズ




僕が"AGAIN"を初めて聴いた時に最も心を打たれた歌詞がある。


遥かな昔 海に沈んだ架空の街の地図で 旅をしているみたい


このフレーズである。

直近では"ルーズ"の


夜を抜けた街は 飴細工みたいに
恋人たちの想い 巻き込んだまま



もぶちのめされた歌詞であるが、それに匹敵する。

あまりに秀逸な比喩だと思う。

しかし、この歌詞は何を指しているのだろう。


架空の街とは



さて、ここからが個人的な推察である。

海に沈んだ架空の街、とは音楽業界のことを表していると思う。

最近、とても印象的だった新藤晴一の言葉がある。"ワン・ウーマン・ショー~甘い幻~"についてのコメントだ。


「自分なりに求められていたと思うタイプの詞を書いたが、結果的にセールスは伸びなかった。なのでこれからは“狙って”書くのをやめようと思った。」


ここでいう求められていたというのは、"サウダージ"のような歌詞のことだろう。

特に歌詞の凛とした女性像はかなり意図的に"サウダージ"を意識しているように映る。当時出演したNHK教育テレビの「Rの法則」でも引き合いに出されていたほどだ。

"サウダージ"の歌詞は女性語であるが、歌っている心情はどちらかというと男性的なものだという。
そのまま男の言葉にしてしまうと女々しくなってしまうので、あえて女性語を使ったという。

"ワン・ウーマン・ショー"もそこを狙って女性語で書かれた。
しかし、結果的にはその狙いは外れてしまい、それはセールス面でも強く出てしまう結果となった。

ここで自分なりの狙いと世間の乖離に新藤晴一は気づいたのだろう。

かつて繁栄してた街(かつての音楽業界)は、もうここにはなくて、その時の地図(尺度)で計ろうとしても、現代の価値観に置き換えると、決して目的地には辿り着けないものとなってしまったのだ。

そこはもう海の底なのだ。










「君」とは



音楽に正解はない。その道標すらもない。

だからアーティストは日夜手探りしながら新たなメロディやフレーズを探している。

見えていたと思っていた地図も、今は掠れてしまっている。もしくは、最初から地図なんてなかったのかもしれない。

曲中の歌詞には「君」とは誰のことだろうか。

僕は「かつての自分自身」だと思う。

「壊すべきこの世の中」とうまく渡り歩いてしまっている、自分、そんな自分をかつてオーヴァードライヴミュージックに夢中になり、あのロッカーに憧れた自分はどう見るだろうか。

二番で「君はあの時黙って頷いてくれた」とある。

ねこまつさんのブログにもあるが、僕もこの情景はTamaが抜けた時の出来事だと思う。

2人体制となったポルノグラフィティが初めて行ったライヴ「Purple's」、そのアンコールで新曲として歌われたのは新曲"プッシュプレイ"であった。


OK もう一度血をたぎらせて
気持ちのギア オーヴァードライヴする


なぜ"AGAIN"の曲中で「AGAIN」が二度繰り返されるのか。


それは二度目の決意だったからではないだろうか。

「The dice are cast」のツアーのMCで新藤晴一は言った。

「17年間やってきてようやく『RHINOCEROS』のような、自分たちが創りたかったようなアルバムを創れた。」

「RHINOCEROS」の曲について新藤晴一は「自分たちのやりたいことをやろうと思った」と語っている。

そんなアルバムを引き連れたツアー、そのステージに立つ姿はまさにかつて憧れていたロックスターだったではないか。

ツアーに持っていくのは厳しくなってきたという、ヴィンテージのレスポールをあえてメインギターとして使用したのは、その決意を示すかのようだ。


信念は潰えず、今もまだ続いている。



★歌詞解釈シリーズ



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2 件のコメント:

  1. はじめまして。ここ数年でポルノの新曲には響くことがめっきり減りポルノ離れをしておりました。そんな時に聴いたAGAIN。やっぱり好きだなぁと思わせてくれる、久しぶりに1発目から沁みる曲でした。毎日繰り返し聴いてます。

    改めてポルノの曲を考えた時に、他のアーティストと圧倒的に違うのはやっぱり歌詞だと思いました。昭仁の歌詞もすきだけど、晴一の詩はやっぱり晴一にしか書けない。その比喩的表現の幅たるや。比喩的だからこそ、聴く人によって重ねるものが異なる。そこが面白いなぁと感じます。流行りの曲を聴くと多くが自分や相手がどんな人かだいたい想像できるような気がします。

    私はこの曲を何度も何度も聴いて、
    「若いころ無邪気に描いてた夢(地図)に、君(親や近しい人)は応援してくれてた。でも今の僕はこんなダメなやつになってしまって、そんなやりたいことなんてもうとっくの諦めて、夢や目標を無くしぼんやりと人生を過ごしているんだ」という風な哀しくて孤独な大人の気持ちを歌ったのだと思いました。

    ベースの考えは一緒だけれど、それを音楽業界やTamaに喩えているのだろうという考察は、私の中でまったく生まれなかったのです。だからポルノの曲は面白い。またファンになれそうです。

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    1. コメントありがとうございます。
      "AGAIN"本当に名曲ですよね。ポルノ、晴一さんの曲は人によって本当に解釈が様々で面白いです。なかなかそういう歌詞が書けるアーティストは最近いませんもんね。

      すごろっくさんの解釈、とても好きです。そういう捉え方もありますね。
      僕の解釈はねこまつさんの歌詞解釈読んだことで思ったことを広げた形です。ねこまつさんの記事なければ僕もここまで行きつきませんでした。最近のポルノもしっかり聞けば良い曲もたくさんあるので、ぜひぜひたくさん聞いてください!

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